【インタビュー】北海道教育大学 財務部の皆様 WinActor®導入事例紹介

【インタビュー】北海道教育大学 財務部の皆様 WinActor®導入事例紹介

RPAによる業務の自動化を検討し始めた時期やきっかけ、トライアルから本格導入までの流れ、RPAを実際に使っている現場部署と推進していく部署のそれぞれで工夫している点や課題をお伺いしました。


大学事務局前にて(左から 財務部 小林さん、幸谷さん、神山さん、中塚さん、冨田さん)

※インタビューは大学構内で実施したため、感染対策としてマスク着用での撮影となりました。

※インタビュアー1:芝田 剛志(株式会社エデュース コンサルティング部)
学校専門のコンサルタントとして経営改善、業務改革のプロジェクト等に従事。
全国の学校に対して RPA を利用した業務改善を行っている。本実証実験では、対象業務のロボット作成支援を担当。

※インタビュアー2:瀬川 保宏(株式会社エデュース 営業部)
営業として学校の様々な課題に対してソリューションを提案。北海道エリア担当。
コンサルタントの芝田と共に営業面から学校を支援。

自動化した業務「支出伝票データ入力処理」

1.RPA導入検討の時期やきっかけ

芝田:大学としてRPAの導入を検討した時期やきっかけ、またその際の学内体制やRPAに対するイメージについてお聞かせください。

RPA の導入検討経緯について語る幸谷さん
※構内でのインタビューのため、マスクを着用しています

幸谷: 2021年にIT総合管理室から相談があり何社かデモンストレーションも見ていましたが、RPAによって業務が自動化されるというイメージが浮かびませんでした。そのような中で、エデュースのRPAセミナーがあることを他の職員から聞きつけ、新潟大学がRPAを使って業務の自動化を進めていることを知りました。同じ国立大学の事例紹介はとても参考になり、本学でも前向きに考えるきっかけになりました。

神山: 今まで改善したいと思っていた業務について、セミナーの中で新潟大学がRPAを使って実際に改善しているのを見て「私たちでもできるかもしれない」と思いました。ただ、セミナーを聞いているだけだったら「こういうのをやっているんだ」というだけで、その後も淡々と仕事をしていたかもしれません。後日、営業担当の方から、「普段から困っている業務等にRPAが活用できるかWeb打合せで情報交換しませんか」と、お電話をいただいたことが本当のきっかけだったかもしれません。

瀬川:日々の業務の中で、非効率な仕事の進め方をしてるなど、改善したい業務がいくつか
挙がっていたのでしょうか。

RPA の検討当時の様子をお話いただく神山さん

神山:そうですね。日々の業務で「この業務は毎回手入力しないといけないのか」「この量をいつもやらないといけないのか」と思うことが多かったです。本学では非常勤職員さんと一緒に経理の業務を行っているのですが、去年の3月で雇用期限が来る予定でしたが、正規職員がすべての業務を把握しきれておらず、この状況で年度末業務を乗り切れるのかが懸念があり、その危機感から具体的に業務の自動化の話が進みました。

幸谷:たしか、初回の打ち合わせから芝田さんにも参加いただき、瀬川さんとともに我々の話を聞いていただいたことで、課題を整理し可視化できたと思います。親身に聞いていただいたのがよかったです。その時の打合せ資料が学内検討する際のたたき台としての資料になりました。

2.RPAにふれてみた感想

芝田:そして、その後しばらくしてからトライアル研修(お試し)を開始されましたね。

神山:経理課だけではなく、当時、IT総合管理室にいらした冨田さんも一緒に研修に参加いただき、他部署でもRPAを使っての業務の自動化ができることがわかりました。

冨田:当時、IT総合管理室では年度末から年度初めにかけて単純作業が集中していました。その業務について「RPAが活用できるのではないか」となり、一緒にトライアル研修を受けて、実際にシナリオを作成しました。

芝田:実際にRPA(WinActor®)を操作してみてどうでしたか?

冨田:最初は慣れるまでに少し時間がかかりますが、フローがしっかりとしているのと手順を覚えれば問題ないと思いました。画像マッチングの際に解像度が変わるところは少し調整が必要ですが、通常のExcelデータの転記やブラウザの使用等であれば問題なくできるので個人的には使い易い方と思います。

RPA を使ってみた感想を語る冨田さん

神山:私はシステム操作関係が疎く、一から自分でシナリオを作るのは難しいのですが、操作研修を通して、不具合が起きた際の対処方法(例えばロボットの読み取りタイミングを少し遅らせるなど、軽微なメンテナンス)を習得できました。

芝田:研修を受けてみて、RPAの可能性や限界など感じたことがあれば教えてください。

中塚:日々、業務システムを使う中で、「ここがこうだったらいいのになぁ」と思う事はありますが、業務システムのカスタマイズは高額な費用がかかる場合も多いですし、サブシステムをゼロからコーディングできる職員も限られています。ですが、RPAは視覚的に業務の流れを図式化(シナリオ化)するだけでプログラムが流れていくので、取り組みやすいと思います。将来的にはGoogle Apps ScriptやVBAなどのプログラミングへの発展に向けた基礎にもなりそうだと思いました。

芝田:中塚さんがおっしゃる通り、「カスタマイズするほどではないが少し改善したい」という部分にRPAは向いていると思います。WinActor®はプログラミングスキルも必ずしも必要ではないですよね。

3.自動化した業務

芝田:改めてRPA化した業務について教えてください。

神山:本学では財務会計システム上で送信されたデータと紙媒体で各キャンパスから送付された書類を支出伝票にしていく際に、非常勤職員さんが支払日や支払い口座、勘定科目を調べて入力していく作業があり、この業務の一部を自動化しました。ただ、非常勤職員さんのお二人の方が3月末で雇用期限がきますので、年度末、忙しい時に新しい方へ引継ぎをしながら年度末業務を乗り切れる想像がつかず、その危機感から具体的に業務の自動化の話が進みました。

幸谷:中期計画の関係で、6年に1度、締切が1週間ほど早いタイミングがあり、ちょうどその時期(令和4年3月)にかかっていたので、結果的にRPAを導入していて大変助かりました。

芝田:お話を聞いていると、「この業務が適していた」というよりは、「この業務を自動化しないとまずい」という危機感から選択したんですね。

幸谷:そうですね。また、量だけでなく、反復作業も多かったことも、その業務を対象にした理由です。対象業務を何にするかも含めて大学としてRPAに取り組むことの学内了承を得てトライアル研修に臨みました。

4.中期計画上のRPAの位置づけ

芝田:RPAを進めていくにあたって、大学の了承を得るための動きなど、差し支えなければ教えてください。

幸谷:実は隣にいる、小林財務部次長が当時、学内上層部と調整していただき、RPA導入の後押しをしてくださりました。

小林:本学の中期目標の中で、「ニューノーマル時代を見据えたワークスタイルの構築」があり、業務効率化の一環としてRPA導入を試してみたいという形で予算を取りました。今年度末に成果報告することになってましたが、結果として効率化が図れて導入のメリットが出ましたので、今年度は他の業務にも活かすことができないか、現在は各部署にアンケートを取って進めることとしました。

業務効率化の一環としてRPA活用検討を計画に盛り込んだ経緯を語る小林さん

芝田:2か月間のトライアルで一定の効果が確認できましたが、他部署の皆様の反応はいかがでしたでしょうか。

小林:まだ部署によって温度差があると感じていますが、エデュースのSD研修(DX人材養成研修動画)を実施してから、業務改善やRPAに関する声が集まってきており、学内の職員の意識が変わってきていることを実感しています。

5.自動化した業務の費用対効果

芝田:RPAを導入したことによる費用対効果はいかがでしょうか。

神山:RPA導入前は2人の非常勤職員さんがこの業務を担当していましたが、今はRPAと1人の非常勤職員さんで対応できるようになりました。また、手作業を減らすことにより入力ミスも減り、業務品質も向上しました。もう1人の非常勤職員さんの方には別の業務を担当していただいております。

神山:大量の伝票登録が必要な繁忙期には、(冨田さんが作ったロボットの)処理待ちになるくらい、RPAが大活躍しています(笑) 。

冨田:以前はタスクスケジューラを用いて朝や夕方にロボットが動くように設定していましたが、もっと稼働させたいという要望があり、ロボットの実行頻度を多くしています。

幸谷:あと、非常勤職員の方もRPAの扱いに慣れてきまして、支出伝票起票の業務工程の中にロボットではできない手作業があった場合でも、一旦すべて登録した後に、手作業で修正するというプロセスに変えるなど、若者の柔軟な発想で対応するという新しい発見もありました。

6.今後の展望

芝田:今後のRPA活用に向けての展望をお聞かせください。

神山:今までは「必ず人が身を粉にしてでも期限に間に合わせないといけない」という考えでしたが、RPAを導入した後は、「この業務は人がどうしてもやらないといけないのか?」という視点が生まれました。私は育児のため時短勤務をしていることもありますが、人員も時間も限られている中で、早く正確に仕事をしてくれる職員がもう1人いるような感覚です。改善できる業務はまだたくさんあると感じています。例えば、一度作成したデータを各キャンパスの担当者に渡して、それぞれ同じように入力するなど、従来の業務のやり方から改善ができるのではないかと思っています。

中塚:RPAを推進していく立場としては、「紙発行してから」「人がちゃんとチェックしないといけない」「ハンコを押さないといけない」という固定観念を覆していくことが必要だと感じています。そこの意識が変わってくると少しずつ「RPAを活用してみようか」という発想が出てくるのだと思います。

RPAの浸透には個々の意識改革が必要不可欠と語る中塚さん

小林:来年度以降に向けて、電子決裁文書管理のシステム導入を考えており、現在各部署で業務フローを作成しています。業務フローを作成する中で改めて自分の仕事を見直した時に「なんでこんな単純な仕事があるのに何とかならないのだろうか」という声もあがってきています。そのような声を拾っていくのが大切なのだと思います。職員の業務に対しての意識改革を進めながら、ゆくゆくはRPAと電子決裁システム等を組み合わせたりして、全学的な業務効率化につなげていけたら思っています。

中塚:全職員に経理課の事例を軸にRPAの紹介をして、自動化のネタになりそうな事がないかを公募したところ、人事課の諸手続き関係等が挙がってきたので、今後取り組む予定です。また科研費関係の業務では新潟大学で素晴らしい事例があるので、参考にさせていただき、本学でも進めていきたいと思います。昨年実施した学内説明会では、RPAの強みや魅力を伝えきれていなかったと思うので、目に見える形で、業務改善の結果をアピールできればと考えています。

神山:まだ経理課内でしか情報共有できていないのがもったいないですよね。他部署のルーチン業務にRPAを活かせると、もっと広がるかもしれないですね。

中塚:各キャンパスでそれぞれ行っている業務を整理して、一か所に集約して大量業務をRPAで処理することで、RPAの恩恵を経理課以外にも広げていきたいなと思っています。

瀬川:以前打ち合わせの際、札幌校だけでなく旭川校、釧路校、函館校、岩見沢校や札幌駅前サテライトといった各拠点にWinActor®の実行版を入れる、事務局のロボットを増やす等も話がありましたが、そこにつながるのでしょうか。

中塚:そうですね。各拠点でロボットに読み取らせるための下準備のExcelデータを用意してもらって、指定したフォルダに格納しておいてくれれば、後続の処理は札幌校で引き取りますよ、とかですかね。そのためにも業務フローの整理が必要だとは思います。実際に業務をしている各現場の担当者が一番わかっていると思うので「もっと楽に処理したいな」という発想を持ってもらえるように推進していきたいです。

小林:国立大学で業務は大きく変わらないと思うので、今後もエデュースさんを通して他大学の事例を参考にさせて頂き、本学にも同様の事例を増やしていければと思います。これからも、色々な大学との連携を進めてもらえれば幸いです。

神山:新潟大学や岩手大学の事例がとても参考になりました。学内説明会にも出ていただいて、汎用的な事例も聞けたのがとても大きかったと思います。

芝田:今後、他大学の同じ部署の職員との情報交換や交流があると良いですよね。学校によっては業務担当者が1人という場合もあるので、他大学の事例が参考になると思いますので、エデュースとしても企画していきたいと考えております。本日はありがとうございました。

今回、インタビューに答えてくださった財務部の皆様。
(手前から 小林さん、幸谷さん、神山さん、中塚さん、冨田さん)

【国立大学法人北海道教育大学 プロフィール】
北海道教育大学は、道内5都市(札幌、旭川、釧路、函館、岩見沢)に5つのキャンパスをもつ教員養成大学として出発し、以来半世紀余りにわたり教育界を中心に数多くの人材を送り出してきた。
 教員養成課程においては、教師を高度に専門的な職業人として捉え、理論と実践の往還を実現するカリキュラム改革により、高い倫理観と実践的指導力を備えた教員養成に重点を置くとともに、グローバルな視点と高度なコミュニケーション力を有する教員養成を目指している。
 教員養成の拠点大学として、教師はもとより、豊かな国際感覚をもって、あるいは、芸術やスポーツを通じて、地域活性化を推進する人材を輩出している。

この記事のライター

株式会社エデュース 営業部

学校専門の営業として、全国の学校に対してRPAの導入支援を行っている。

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